結果から原因を推測することはしばしば非常に難しい。例えば、交通事故が起きたとき、「スピードを出しすぎてカーブを曲がりきれず対向車線にはみ出して……」などとその原因が語られますが、本当にスピードの出し過ぎが原因だったのでしょうか。
同じだけスピードを出しても曲がりきれる人がいたかもしれませんし、車が違ったら事故にはならなかったかもしれません。ESPなどの電子装置があれば事故の起こる確率は減ったでしょう。あるいは、道路にバナナ (!) が落ちていて、駆動輪がスリップしたのかもしれないし、タイヤが減っていた可能性だってあります。もちろん、対向車が来ていなかったら事故は起きなかったでしょう。いや、そもそも車を運転していなかったら、事故は絶対に起きないのです。いずれにしても、多くの場合、交通事故は複数の原因が複雑に絡み合って起きるものです。
ところが、ニュースや警察の発表ではこうした複雑な原因をごく単純に述べるだけです。おそらく、最もよく使われる原因が「スピードの出し過ぎ」でしょう。そのせいか、スピードさえ出さなければ安全運転だと考える人までいます。重要なのは、道路状況に合ったスピードを選択することであって、どんな時にでも鈍足走行をすることが安全だというのは、傲慢な考え方です。交通法規を遵守することは重要ですが、それを守っていたからといって事故が起こらないわけではありません。
常々そんなことを理屈っぽく考えていましたが、NAVIで連載されている「矢貫隆の交通問題」で似たような問題が扱われています。彼の評論はなかなか示唆に富んでいて面白いです。